【屋久島憲章の想いを受け継ぐ会】実施レポート

               カテゴリー : レポート

投稿日 | 2021年1月22日(金)

【屋久島憲章の想いを受け継ぐ会】実施レポート

HUB&LABO Yakushimaの丸山です。屋久島環境文化村センターで働きつつ、NPO法人HUB&LABO Yakushimaの副理事として活動しています。
イマジン屋久島では、これからの世の中が必要としていることを学ぶ「オンライン講座」、先人の方々が作ってきた屋久島の想いを知る「想いを受け継ぐ会」という二つが今年度の軸となっています。今回は「想いを受け継ぐ会」の一回目。屋久島憲章についてです。

講演は柴鐵生さん。本来であれば、会場に来てお話していただく予定でしたが、コロナウィルスの状況下やご本人の体調を考慮し、事前にインタビューを行い、当日はインタビュー動画を見るという形となりました。

【屋久島県憲章全文】

前文

地球と人類の宝物である屋久島。 この島は、周囲132km、面積503km2の日本で5番目に大きい島である。 屋久杉を象徴とする森厳な大自然に抱かれ、神々に頭をたれ、流れに身を浄め大海の恵みに日々を委ねて人々が生きた島。この島は、はるかな昔から人々の魂を揺さぶりつづけ、近世森林の保全と活用で人々が苦しみ葛藤した島である。そして今、物質文明の荒波をようように免れた屋 久島は、その存在そのものが人間に対する啓示であり、地球的テーマそのものであ る。 この島に住む私たちは、この屋久島の価値と役割を正しくとらえ、自らの信念と 生きざまによって、この島の自然と歴史に立脚した確かな歩を始める。そのため、 この島の自然と環境を私たちの基本的資産として、この資産の価値を高めながら、 うまく活用して生活の総合的な活動の範囲を拡大し、水準を引き上げていくことを 原則としたい。 この原則は、行政機関はもちろん、屋久島に係わる全ての人々が守るべき原則で ありたい。 国の自然遺産への登録も、鹿児島県の環境文化村構想も、この原則を尊重し、理 想へ向けて、その水準を高く100年の計を誤らず推進されることを願うものであり、 これを契機として、次のことを目標とし、ここに屋久島憲章を定めます。

条文
1わたくしたちは、島づくりの指標として、いつでもどこでもおいしい水が飲め、人々が感動を得られるような、水環境の保全と創造につとめ、そのことによって屋久島の価値を問いつづけます。
2 わたくしたちは、自然とのかかわりかたを身につけた子供たちが、夢と希望を抱き世界の子供たちにとって憧れであるような豊かな地域社会をつくります。
3 わたくしたちは、歴史と伝統を大切にし、自然資源と環境の恵みを活かし、その価値を損なうことのない、永続できる島づくりを進めます。
4 わたくしたちは、自然と人間が共生する豊かで個性的な情報を提供し、全世界の人々と交流を深めます。

屋久島憲章の動画はこちらから!

「屋久島憲章」
言葉は聞きますが、それが一体何で、どういう流れで、なぜ作られたのかということはよくわかっていないということがあります。特に屋久島には、「屋久島憲法・屋久島憲章・屋久島環境文化村構想」があり、それらの違いや歴史を正確に把握することは、様々な文献を照らし合わせないとなかなか見えてきません。私たちも今回このような機会をいただき、改めて知ったことや歴史がありました。スタートではその情報をシェアさせてただいました。

「想い」

柴鐵生さん。今回私たちのお願いを快く引き受けてくださり、インタビューに応じてくださいました。依頼するなかで鐵生さんがおしゃっていたことは、「自分がしゃべれるのもあとわずか。その間にどれだけの人に想いを託せるか。」ということです。また、インタビューや本を通じて鐵生さんから伝わったものは、今の屋久島の環境が先人の方が命懸けで取り組んでくださったことがあるからということです。
以下、いただいた想いの抜粋を書かせていただきます。

「屋久島を一言で表すと」

ー人々の魂が常に揺さぶられて動いてきた島。
そう鐵生さんはおっしゃっていました。鐵生さん自身も、山を深く知っているわけではなかったが、屋久島の森を見て、この森は守っていかなくてはならないと魂が動かされて、様々な行動をされたそうです。また、その取り組みのなかで象徴的な話が、森の伐採を進めていた役所の方が、一人で屋久島の森を見に来て、帰ってすぐにあの森は守らなければいけないと、意見を真逆にされたそうです。それほどまでに、屋久島とは人の魂を揺さぶるものであるということを、その話から改めて感じました。

 

「屋久島のことをしっかり言い切ることができれば、伝わることができれば世界は動く」

―情報化社会になってみんな知っているけど、昔に比べて、軽くなっているのではないだろうか。昔の屋久島の人は、もっと自然に対する想いが重厚なものだった。自然にたいする造形を深く持つことで、屋久島は時の権力などに左右されない縄文の島として価値を発揮していくことができるのでは。

自然と向き合うとは・自然のなかで生きるとは。改めて向き合い方を考えさせられる言葉でした。

「残してほしい屋久島」

―人を感動させる島 ずっとそうあり続けてほしい
屋久島が好きということであってほしい 世界にとって 日本にとって

鐵生さんの、その屋久島を誰が継いでくれるのか、継いでいってくれるのかという切実な願いをインタビューをしながら受け取りました。なんとか屋久島を残したいと思うとおっしゃっていて、屋久島は何度も森を保護する・伐採するの歴史を繰り返しているので、次に伐採するとなったときに誰か立ち上がってくれるのだろうかという想いを持たれていました。

 

インタビュアーから想いを伝える

鐵生さんのインタビュー動画の後は、インタビューに行った人から、どんな想いを受け取ったのかということをグループの方に伝えるという場となりました。私も伝える側の一人として感じたことは、ある参加者の方から「ということは、柴鐵生さんですよね」と言われたことです。それは、鐵生さんの言葉をインタビューするという意味、それを伝えるという意味を改めて考えさせられるものでした。先人の方の想いを「受け継ぐ」ということは、その方の積み上げてきた想いを、次の方に渡していくというとても重さのある行為。それをこれからやっていくということを心におきました。

 

「いまあるもの」

冒頭でも書きましたが、今回のインタビューや会を通じて感じたことは、今いるこの場は、多くの人や生き物の想いが引き継がれて成り立っているということです。とても当たり前のことですが、この瞬間を生きていると、忘れがちになってしまうこと。しかし、その想いを知り、その想いの深さに触れると、今いる場所の見え方が変わってきます。

この積み上げられてきた想いをどう繋いでいくか。

多くの方と一緒に考え、行動していきたいと思います。

 

執筆者:丸山(まる)
屋久島環境文化研修センターのインストラクターをする傍ら、NPO法人HUB&LABO Yakushimaの副代表理事として活動中。今後は屋久島にある空き店舗を、屋久島の林業の発信基地+親子の集える場としてコーディネイトする予定。

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